『Anniversary』 D15Bさま投稿NO2 Happiness一周年記念品です♪
食事を済ませ、二人でテレビを見て過ごす夜更け。
そうやってくつろぐ聖の前に、祐巳がスイと一枚の皿を差し出した。
「聖さま、デザートですよ。食べてください」
「ああ。すまない」
差し出された皿を受け取った聖は、思わず目をみはった。
そこに乗せられていたケーキは一目で高価と分かるほど豪華なもの。
中身はかなり有名な店のケーキだということにすぐ気がついた。
「どうしたのさ、これ?」
「えへへっ、ちょっと贅沢してみました」
はにかみながら祐巳は聖の前に紅茶を置いて、ちょこんと聖の横に腰掛ける。
「ありがとう。いただくよ」
なぜこんな高級なケーキを買ってきたのか少し不思議に思いながら、聖は素直にそのケーキを食べることにした。
スポンジの間に大粒の苺が挟まれた上品なストロベリーショート。
フォークを入れると上から下までサッと通るほどきめ細やかでふわふわのスポンジ。
甘くてみずみずしい苺と、それを引き立たせる甘さ控えめな生クリーム、そしてそれを両方引き立てるスポンジのバランスが絶妙で
口に入れたとたんほっぺたが落ちるとはこの事かと聖は思った。
「美味しい……」
「そうですか、よかった」
聖の呟きを聞いて、嬉しそうに祐巳は顔をほころばせた。
「ふう……」
ケーキを食べ、紅茶を飲み干してため息をつく聖。それはもちろん満足から来たものだ。
そんな聖を、祐巳はニコニコしながら見つめている。何かを言いたげなその表情を、聖は少し不思議に思った。
「聖さま」
「なんだい、祐巳?」
やや置いて、ようやく用件を切り出した祐巳に、聖は優しく微笑みかけた。
「今日……何の日か覚えてます?」
「え?」
聖は思わず首を捻る。もちろん今日は祝祭日でもなければお互いの誕生日でもない。
クリスマスでもなければハロウィンでもなく、よくある数字のごろ合わせでできた○○の日というわけでもなさそうだ。
「う〜ん……」
「本当に心当たりが無いですか?」
重ねて祐巳は訊ねる。
「初エッチの日だっけ?」
「馬鹿……」
苦し紛れに聖がひねり出した冗談に、祐巳は思わず呟いた。
「それはクリスマスじゃないですか。でも、その答えニアピンです」
「ニアピンねぇ。初エッチに近い……ごめん、分からないや」
冗談のつもりで言った答えにニアピンと言われて、かえって聖も混乱する。
エッチに近いってなんだろう?
「正解はね……」
その先は答えず、顔を近づけた祐巳は黙って聖にキスをした。
「……!?」
「初キスの日ですよ」
「そうだっけ?」
いきなりの祐巳の行動に、さすがの聖も少々驚いた。それにいくらなんでも聖もさすがに初キスの日までは覚えてなかった。
「そうですよ。聖さまは憶えていなかったんですか?」
「ごめん、憶えてなかった……」
聖は軽く頭を下げる。しかし祐巳は微笑んだままで特に怒った様子もない。
「いいんですよ。それは私が覚えていればいい、ささやかな思い出なんですから」
初めてのキス。
そんな小さな思い出を祐巳がしっかり覚えていて、しかもこんな風に祝ってくれるのがたまらなく嬉しい。
「それじゃあ、その思い出をこれから私が忘れないようにしないといけないね」
「え?」
聖は祐巳の肩口に手を回して軽く抱きかかえると、頬にちょんとキスをした。
その次は唇に、それから鼻に、瞼に、そしておでこにも。まるでついばむように触れるだけのキスを何度も繰り返す。
首筋にも同じように軽くキスをしたとき、祐巳の体がピクリと震えたのがはっきり分かった。
その反応がさらに聖の行動を掻きたてる。
さらに浴びせるようなキスを続けて、ようやく唇を離した聖は祐巳を見つめる。
祐巳の顔は上気して真っ赤に染まっている。そんな祐巳に聖は優しく言った。
「せっかくの記念日だから、今夜は一晩中祐巳にキスをしてあげる。
体中隅々までキスで埋め尽くして、祐巳が恥ずかしいって言っても止めてあげないから。
何も着けさせないから、祐巳が風邪を引いても知らないよ?」
「馬鹿……」
祐巳は恥ずかしげに俯いた。
―終―